事業概要

海外先進事例を通じた私立大学における
ダイバーシティ推進モデルのための調査研究

SDGs(Sustainable Development Goals)17の目標のうち5番目に「ジェンダー平等」が掲げられており、今や女性のエンパワーメントの推進は国際的に共有された課題となりました。にも関わらず、世界経済フォーラムが2021年3月に発表した我が国のジェンダーギャップ指数は156か国中120位(2020年度は121位)と最低水準のままであり、先進国G7の中でも相変わらずダントツの最下位、アジア諸国の中でも韓国(102位)、中国(107位)よりも低く、ASEAN諸国よりも低い結果となりました。このようなジェンダーギャップの問題は、アカデミアにおいても深刻な課題とされており、近年、多くの高等教育機関において、女性研究者支援にかかる取り組みがなされてきたにも関わらず、なかなか成果が上がっていないのが実情です。

そこで、本事業では、国際主義と国際性を掲げる同志社大学と上智大学が協働することにより、両大学と強い連携関係にある海外先進校の取り組みを調査することで、女性研究者の研究力向上、キャリアパス支援等、研究環境整備や大学の戦略目標、実行計画への反映に必要な課題、事例、知見の収集分析を行います。

まずは両大学の現状分析によりそれぞれの大学が抱える課題を現状分析すると共に、国内外の先進的な取り組みについて調査を実施します。さらに海外の先進事例として、両大学と関わりの深いテュービンゲン大学(ドイツ)、スタンフォード大学(アメリカ)、ハーバード大学(アメリカ)、マヒドン大学(タイ)、T.I.M.E. Association(Top International Managers in Engineering:欧州を中心とした理工系大学の国際ネットワーク)の取り組みを調査し、女性研究者が活躍できるような世界水準の環境およびしかけを整理します。その上で、それらを日本の大学に適用するためにはどのような課題があるかを検討しつつ、ダイバーシティ推進のハードルとなる私立大学特有の課題の洗い出しと、私立大学の強みを生かしたダイバーシティ推進モデルの構築を目指します。

海外の調査対象機関及び調査内容

テュービンゲン大学(ドイツ)

ダイバーシティAudit*の調査のほか、テュービンゲン大学のダイバーシティ、ジェンダー関連組織や制度を調査。また、ドイツの女性研究者支援に関わる国の補助金プログラムの内容とその成果、ドイツ国内の大学におけるダイバーシティ推進の取り組み、国・州レベルの男女共同参画・ジェンダー平等推進策に関する調査を実施。
*ドイツ科学助成財団連盟(Stifterverband für die Deutsche Wissenschaft)によるアカデミア向けの認証制度。
Auditに通過すれば、“Vielfalt gestalten”(Shaping diversity)の称号が付与される。

スタンフォード大学(アメリカ)/ハーバード大学(アメリカ)

アメリカの高等教育機関特有の、採用や評価システム、キャリア支援面制度や風土、女性教員の登用を促進するためのキャリア形成への影響と制度に関する調査。またアメリカの高等教育機関の実際の組織体制、研究環境、運営体制も踏まえてダイバーシティ&エンゲージメントの組織の取組みを中心に両機関の関係者へのヒアリングを実施。

T.I.M.E. Association(Top International Managers in Engineering:欧州を中心とした理工系大学の国際ネットワーク)

T.I.M.E. Associationに加盟している大学における女性研究者支援に関わる取り組みを調査することで、欧州の大学における制度や環境整備、その成果を整理。

マヒドン大学(タイ)

マヒドン大学のgender equalityが高評価(THEインパクト・ランキング世界97位)であることや、世界経済フォーラム公表の男女格差を測るジェンダーギャップ指数(GGI)でもタイ国が日本を大きく引き離していることなどを中心に据えて、マヒドン大学の研究者や学生を対象に女性研究者の活躍やダイバーシティの促進に関する大学やタイ国の諸制度や意識、慣習などに関して調査を実施。